さりげない心遣い

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昨年の春のこと。
月一回の研究発表の日…発表者は白髪の美しいM氏。

分かりやすく工夫された丁寧で詳細な資料、活気溢れるトーク
いつもながら感心して聞き入ってしまいます。

発表後、帰り際に突然、お食事のお誘いが…。
「我が家の近くに転勤したんだってね。一度ご馳走しますよ…いつがいい?」
と、嬉しい申し出。

三日後の夕方、職場の帰り道に待ち合わせして…あるスナックふうの居酒屋??
?に入ります。
「今日はママに頼んで、四時から開けておいてもらっているんだよ。」
どうやら、Mさんはここの常連さんのようでした。

入ると、中にはタケノコやワカゴボウの煮物、菜の花の和え物など、
旬のお惣菜がいっぱい♪

「わぁ~美味しそう!こういうの大好きです」早速、感嘆の声をあげる私。
「ここのママは料理上手だからな。ここでいつも美味いものたべさせてもらって
るんだ。」
「野菜もいっぱいですし、健康管理もしてもらえますね?」

Mさんは、最愛の息子さんも失って、現在一人暮らしです。飲み代稼ぎと言いながらまだお仕事を続けていらっしゃいます。

昭和二十八年にM電気入社(…私がまだ生まれる前!)初めは経理を担当して、そ
の後、異動、異動で色々な部署を経験してこられました。その間の様々な苦労話
を美味しい酒と肴とともに伺っていますと…

「あの資料作りね。・・・発表の仕方も、・・・会社で鍛えられたからね。
鍛えられて力がついたんやなぁ…。」と思い出すように一言。

「自分は経理が専門だった。しかし、会社からは、あれもこれもと色んな要求をされて…自分に向かない職場にも回されたし、どうしてこんなきつい仕事…と思うこともあったよ。でも、それをクリアーすると今までできなかったものができるようになる。
一つ進める・・つまり人間として進歩するんや…」という話になってきました。

そして「今の話ね…、何が言いたいか分かってくれた?」とM氏はちらっと私の顔を見ます。
「えっ?」
「こないだ会った時に、新しい職場はどう?って聞いたやろ?」
そこでハッと気がつく私。
慣れない職場で、しかも仕事量もいきなり増え、お手上げ状態。
「最近、仕事も限界かなぁ…と思っているんです。そろそろやめることを考えてもいいかな…と思っているんです…」と、思わず、弱音を吐いてしまいました。

その言葉をMさんは聞き逃さなかったようです。
「大変そうだとは思ったけどな、…困難だからといって、逃げてはあかんと思う・・。
それもチャレンジや!!そこを乗り越えれば、また一つ力がつくと思うからな…」

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そうだったんですね。それを私に伝えたくて…お食事に誘って下さったMさん。

美味しい食事の席を用意してくださって、気になったことをやんわりと話され、
励ましてくださったMさんのさりげない心遣い・・。
それがとても嬉しくて、心にしみた私でした。

今年も春が来て、菜の花や、タケノコのお総菜を作っていたら・・・
Mさんの言葉を思い出しました。
「逃げたらあかん。チャレンジや、乗り越えれば、また一つ力がつく」
75歳を過ぎても、いまだチャレンジの人生を送るMさんの言葉だからこそ、
私も、頑張らなくちゃ!と、思います。
きっと、春が来るたびに思い出すことでしょう。
 Mさんとの温かい思い出と このことばを。