「原発をやめること、それは人間のいかなる価値を超えて一番大事な倫理なのです」大江健三郎さんのメッセージ・さようなら原発2.11(動画&文字起こし)

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「核廃棄物残すな」 脱原発集会で訴え
大江健三郎」2.11さようなら原発1000万人アクション




大江健三郎でございます。
昨年9月の19日に、「さようなら原発集会」を開きました。
6万人の方に集まっていただきました。
皆さんも、今日、よくいらっしゃって下さいました。

そこで、福島から来られた方が、一人の婦人が、こう話しをされました事を、よく覚えていて下さると思います。

「私たちは、今、静かに怒りを燃やす東北の鬼です」
そう言われました。
東北の農民の方達、漁民の方達は
非常に長い苦しみの歴史を担って来られました。

そして、近代になってからも、
民衆の怒りの表現はさまざまにありました。

昔の歴史から、古代史から、その民衆の抵抗の歴史が描かれています。
そして、時がたつにつれて、怒りは、あるいは悲しみは静まって、
東北の人達は、あの美しい民謡の音楽を作られました。
また、楽しく生き生きとしたリズムの踊りを作られました。

その歌の言葉をよく聞くと、そしてsそのダンスの踊りを目で追っていると、
やはり、抵抗の言葉、怒りの言葉は聞きとる事が出来ます。

私達が良く知っております宮沢賢治の詩は、
そういう人たちの言葉のリズムを生かしていると、私は考えております。

それが今、新ためて大きい悲しみとして、または怒りとして蘇ってきました。
今、私たちは、あの、
「静かに怒りを燃やす鬼です」と言われた、あの声を、
直接に聞いて、また、それを活字で読んで、それから、お互いに語り伝えて、そしてここに参りました。

新しく集まって下さった方達も相当多いです。

あの声を実は私等の声として生かしていくという事にしたい、というのが私たちの願いです。
今、福島の大事故の分析・報告が、進んでいます。
そして私たちは、原発がどれだけ大きい最悪なのか、そしてその危険は将来につながるものとして、
何時までも、何時までいってもいいほど残り続けるものだという事を知っています。

原発が毎日作りだしている核廃棄物は、
これから30年、40年、さらにもっと長く積み重なっています。

地下深く埋めると言いますけれども、
日本の国土は、あの死ををもたらす世界中の大きいプレートが集まっている場所です。
それから、活断層の網の目のようなものが私たちの国を覆っています。

地震はいつ始まるか分かりません。

最近も東京が7年間の、あるいは40年間の間の確立において、
70%、あるいは40%大地震が起こるという報道がありました。
それについて私どもは非常に大きいショックを受けています。

ところがですね、50年間だったらどうだろうか、
今から50年の視野で考えれば、
その時確率は限りなく100パーセントに近づくんじゃないでしょうか

60年70年と言えば尚更です。

私たちは、・・・その時はもう、私どもはいないでしょう。私はいないでしょう。
しかし、たとえば私の孫の世代に、遺産、幼稚園児の女の子にですね、
この大きい廃棄物をそのまま残さなければならない。

それを処理する方法は70年後には、まだ発見されていないだろうというのが良心的な科学者たちの考えです。
これは人類が、いくつも動物はありますけれど、
私ども人間が決してやってはならないこと
そしてこれまで、この数万年の間に私達がやらなかった事であります。

これだけの人類が全て滅びるような最悪な種をそのまま置いていくという事は
私達が今初めて、やっているんです。


それは、人間がやらなかった、これまでやらなかった最悪の事、最も悪い事じゃないでしょうか。

それは、つまり、人間として、人間としての倫理、モラルの根本に反するものだと。
私たちは考えなければならないと思います。


ドイツで原発を廃止する必要があるという事を決めた学者たちが供述しました。
そして彼らは見事な報告書を作りました。
あの委員会がですね、ドイツ倫理委員会、
ドイツのエシックスのモラルのコメディと言われていた事を、述べられていた事を
皆さんは御記憶になっているでしょう。

このドイツ倫理委員会が、ドイツの人間の、将来の人間の、そして、ヨーロッパ全体の
世界の人間がやってはならん事を、何よりも緊急にやらなければならない問題として、
そのようなこと、すなわち倫理として、倫理の原理としてこの原発の問題を取り上げた。
そして、メルケル首相はそれを受け入れました。
議会はそれを通しました。そして、ドイツは大きい一歩を踏み出したわけでありました。

私等は今日本で核廃棄物の、核廃棄物が毎日、それを動かせば出てくるところの核廃棄物の始末も出来ないまま、
それを私たちは持っています。

私たちはよく知っていますが、
あの爆発の危機に陥っていた、あの発電所の、大きい水槽に入っている、
あそこのプルトニウムとウランの塊が1350トンとか、
そんな大きい量まで残っている訳です。

あれを持ったまま私たちは原発をやっている。

しかも今、その原発をですね、
私たち民衆の参加の無い政治の、そして専門家のあるいは東電の関係者たちの委員会が協議して、
もう一度、今止めてある原発を、動かそうと、稼働させようとしています。

そうなれば、それが作りだす核廃棄物は、増大するまま。
そして、もしですね、もし、事故が起こったらは、
もう一度この国に、地震の危険に満ちた国に、もし事故がもう一度起こるならば、
私たちはこの国を、あるいはこの国人を保っていくことはできないかもしれない。

ところが政治家も実業家も官僚も、そして多くの人達がこの原発のうやむやの再開ということを認めようとしている。
こういう時に、こういう日本人が大きい危機の前で、
うやむやにそういう事をさせようとする時、私たちは抵抗しなきゃいけない。

そういう抵抗するとは何かというと、どのように抵抗出来るかというと
これは倫理なんだと、日本人が原発を全廃するのは倫理なのであって、
つまり人間のいかなる他の価値
経済的価値とか政治的価値とか国力の何とかとかいかなる価値を超えて
根本的に一番大事な倫理なのであります。

ー拍手ー

それを守り抜こうではないか。ということであります。

私たちは今、もし、希望が私達にあるとすればですね、今現在はまだ原発を止めたままである。
再稼働は行われようとしているけれども、それへの抵抗が起こっているという事です。
そして私たちは、今のうちにはこう言えます
日本人は、私たちは原発を止めるんだと、それを決意したんだと。


ー拍手ー

そのことを私たちは言う。
子どもたちにですね、これが、なぜ私達がそうするかというと、
これは人間らしさということのなかで、一番重要な事だから。
ということであります。

みなさん、他方で、これからの学校でですね、小学校で中学校で、
子どもたちに教室で先生がですね、
「みなさん、私たちは原発をやめました。もう原発はこの国に無い。
あなた方は原発の恐ろしい廃棄物に悩む事もない。その事故に悩む事もない。
とにかくそりゃ苦しんだけれども、経験が増えたかもしれないけれども、そこを超えて生きていく事が出来る」
ということが、私たちの先生方が言える事です。

原発をやめるという事を私たちは決意して、それを、実行に移さなければならない。
それがですね、私達がはっきりと子どもたちに言える、リセットのできる希望の証という事であります。

そして、あの東北の静かに怒りを燃やす鬼の方も、その仲間の方たちも、
生き生きした優しい人間に戻っていただく事が出来る筈であります。
そして私らもよからぬ運命としてそういう苦しみの中で、困難の中で
鬼にならずに生きていけるかもしれない、
子どもたちはまさにそうだという事をここで確認し合いたいと思います

ー拍手ー



大江健三郎さんのスピーチの中にたびたび出てきた「東北の鬼」という言葉は
9月19日のさようなら原発の時にハイロアクションの武藤類子さんがおっしゃったことばです。



9月19日の武藤類子さんのスピーチも書き出してあります ↓ (最後の方)
9・19「さようなら原発集会」全員の集会の発言内容完全書き出しました
一部転記
福島県民は今、怒りと悲しみの中から
静かに立ち上がっています
そして、「原発はもういらない」と、声を上げています
私達は静かに怒りを燃やす東北の鬼です」



「福島からあなたへ」武藤類子さんインタビューOurPlanetTV2/9(内容書き出し)

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「東北の鬼」という言葉に込められた思いについて語っていられます