MBS報道特別番組「作業員の語る福島第一原発」(1)

毎日放送報道特別番組、(長いので2回に分けます。)
 永岡です、毎日放送ラジオで、たね蒔きジャーナルのスタッフによる、福島第一原発作業員への、上田崇順(たかゆき)アナウンサーの取材の特集があり、いつもの水野晶子さんの司会の元、上田さんの声をお届けいたします。

 福島事故には、重大な情報が隠され、SPEEDIが予測していたのに、官邸、保安院、どこも情報を出さず、住民は被曝させられた。メルトダウン保安院の一人が事故翌日に指摘したのに、それを隠したのです。

 今、本当の姿が見えているのか?それは原発作業員の実態です。
 上田さん、20人の作業員の声を聞いています。
 
 朝5時、大型バスが来て、いわき市に3000人の作業員の大半がいるのです。
作業員への取材は大変で、取材拒否ばかり(マスコミの取材に答えたらだめらしい)。それでも、重い口を開く人がいるのです。 
 
建物はマッチの木で作ったような状態でぶらぶら、その下で働く、壮絶です

 
大変なところ、グチャグチャ、東電も隠さざるを得ない。1~3号機から煙、瓦礫だらけ、鉄板がひん曲がっている」

 「本体がむき出して、建屋の屋根と鉄骨も崩れて、よく放射能が出なかった

 事故後、入った作業員は、崩壊のすさまじさに驚き、また放射能放出への認識の甘さもあった模様です。

 3月12日の爆発は、格納容器内ではないと枝野氏が言い、爆発の危険性を否定。しかし、爆発は14,15日と続いたのです。

 原発内の安全対策、「自分たちもロクに分からない。線量計を当てて、高いところもあった。みんなそうだった。膚が露出していた。そういうところの指導が徹底していなかった。痛みもない」

 作業員によっては、ヨウ素剤の指示があったものの、飲んだ方がいいと言うものの、服用したら14日で検査しないといけない、ポケットに入れっぱなしでたまりっ放しであったのです。ヨウ素剤が何か、話されていなかったのです。

 作業は過酷で、「テレビの何倍もしんどい。全面マスク、呼吸が困難、話も出来ない。携帯もマスクからでは分からない。防護服を着て、体力的に持たない」
 「線量計、ブザーが鳴るまですぐで、30分かからなかったのです。1ミリの被曝を30分で浴びるのに、痛くも痒くもないのです。あの仕事をやれと言うのに、30分では何もできないのです」
 こういう労働を、政府は理解していなかったのです
 事故から3週間、当時の菅総理がJヴィレッジを訪れて、作業員はここで防護服を着て原発へ行く。菅総理原発をコントロールできるようにと言い、この様子の作業員、「菅総理はJヴィレッジしか来なかった、石投げてやろうかと思った、みんな怒っていた。一日入って、物を運ぶ仕事でもしたらいい、涼しい部屋でハンコ押すだけではダメである」と言っていた。
 作業員は、労働環境だけでなく、賃金にも不満があり、1日7000円、12時間拘束であり、4~5次下請け、東電がくれてもピンハネされるのです。
 
4~5次下請けの作業員が多く、ピンハネに怒っているのです。なぜ政府が改善してくれないのか。同じ仕事をして被曝しても賃金が違うのです。

 元請けの話では、一人最低賃金の3倍(2.5万円)もらっていると言うものの、下請けに詳しく言えない。末端の賃金を言うのも聞くのも違反なのです。
賃金の7割以上がピンハネされ、いくらで雇われているか、聞いてはいけないのです。信じられない労働の実態です。
 
水野さん、労働の現場は想像以上であり、弁護士の中西基さん、20次下請けで、ピンハネ率93%もあるのです。
東電に取材したら、東電は請負と契約して、その先は知らない。法令順守をするよう伝えていると言うのです。
 
被曝して作業をすることで法律では年間1ミリシーベルトなのに、福島では250ミリになり、将来ガンになる確率が上がるものの、急性障害は出にくい、そのことは作業員には伝えられていないのです。
 
上田さん、仕事場を離れた作業員にも聞きました。
駅の裏の飲み屋街、作業着姿の男性がいて、原発で働き、ここで疲れをいやす。しかし、仲間と飲むことはないのです。「東電ももとの体質、お山の大将になっている」と言い、東電の対応が変わることを示唆し、自分の発言で同僚も仕事を失うと言うのです。
他の作業員に聞くと、5人組で、一人何かあったら、全員退出であり(喧嘩など)、替わりはいると言うのです。連帯責任で、最初から言われており、こんなことがまかり通る世界なのかと驚きます。
東電は、そんなことは聞いたことはないと言うだけです。

 しかし、東電への不信感は深まり、食中毒とかもあり、次の日に初めて知り、弁当か何かに出て、前に言ってくれという世界です。置き去りの世界なのです。何もかも隠しているのです。ひとつだけなら微々たるものだが、何か隠していないか、疑心暗鬼になるのです。
 正確な情報を出してほしい、各地点の線量だけでも出してほしい、そこは危険と仕事ができる。どこがどれだけ危険か分からないのです。

 安全意識が以前より低下している指摘もあり、行き帰りは防護服着なくていい、線量が下がっていると言う。
赤、白のマスクがあり、それを付けるのに、ここ2,3週間は、建屋で働く人間以外はチャコールフィルターはいらないと言われた。日々被曝しているのに、無理に被曝させられる、なぜ自分たちを守ってくれないのかと言うのです。
 
作業員も不安になり、隠蔽の場面を見た人もいるのです。
吉田所長が本当のことを話そうとしたら(現場、作業員の状況)、取り巻きがついてしゃべらせないようにしていたのです。

本当のことを言って、その方がいろいろな人間の案が出るのです。
 情報隠ぺいが、事故の収束を遅らせているのです。
 事故から1年、建屋のところに走ってやってくれとなり、放射能が高く、そういう仕事しか出来ない。下準備、後片付けとかできず、進捗がものすごく遅いのです。

 行っていないところに行き、ここ、こんなかよぅと、それだけひどいのです。
こんな格好でいいの?2号機は一切触っていない。1号機はカバーしているのに、2号機は温度が上がっているのに何もしていない。3号機の作業員は怖いのです

 1年経っても、作業員は放射能におびえて作業しているのです。

 野田総理冷温停止宣言を昨年の暮れにしましたが、作業員は、この発言に、
収束宣言と言っても、現場から見たら何も変わっていない、総理、何を言っているのか、なにを持って収束なのか。放射能は漏れないことを言うのに、何ひとつ変わっていない、放射能は出て、作業員は被曝しているのです。
総理の収束宣言は、作業員の目から見たものと、あまりに違うのです。

 原発についてどう思うか聞いたら、言えない、なければないで夏も冬も越えられる。なかったら、これから日本で何も出来ない。日本は原子力国、仕事も雇用も減ると言う声があり、考え、悩みながら、原発の存在理由を見つけるように答えたのです。

 別の作業員は、爆発して、これから何十、何百年戻れない。みんなだからがむしゃらにやっているのに、何も変わらない、こんなリスクがあると初めて知った、それでも動かすとは信じられないと言うのです。まだやるのか、なのです。

 上田さん、これが原発を動かすのに重要な証言と言われました。

 水野さん、作業員には関西弁の人も多く、地元で仕事がなく、仕事を求めて原発、そこに貧困があり、原発を生活の糧として、働かないといけない。原発は貧困とセットになり維持されていると言われました。

 作業員の言うことと、政府の言うことに乖離があります。(続く)