小出先生ラジオフォーラム7月27日文字起こし「総括原価方式はどこまでも金儲けが出来るありえない制度

<総括原価方式>「あり得ない事をきちっと制度として作ってしまったがゆえに、 どこまででも金儲けができるという事になったのです」~小出裕章ジャーナル7/27ラジオフォーラム(文字起こし)

ラジオフォーラム
第29回放送
Web公開 2013年7月30日(火)
ラジオ放送日 2013年7月27日(土)~8月2日(金)
ゲスト 原一男さん(映画監督)村松昭夫さん(大阪アスベスト弁護団副団長、弁護士)
パーソナリティ 西谷文和 (ジャーナリスト)
テーマ 人命より経済優先? 大阪泉南アスベスト訴訟を考える
小出裕章ジャーナル



西谷:
今日は、「なぜ電力会社は再稼働をしたがっているのか」ということなんですけれども、基本的に電力会社は「
総括原価方式」で電気料金を決めますから、
赤字にならないですよね?

小出:絶対になりません。

西谷:ね。
要は資産に3%の報酬をのせて決めていきますから、
「赤字だ、赤字だ」って言っているのは、あれも…ウソ…じゃないかな?と思ったりもするんですが。
どうなんでしょうか?

小出:
電気料金をある時期に決めるわけですし、
その時に、いわゆる会社ですから、必要経費というのはあるんですね。
そして会社ですから利潤も取っていいと。
その利潤を今西谷さんがおっしゃって下さったように、
資産に3%、それも時代で変わっているのですが、確か今は3%だと思います。

西谷:はい。

小出:
それだけ、「資産が多ければそれに比例して儲けを取っていい」という、
法律の仕組みがあるんですね。

西谷:そうですよね。

小出:
それで、
「必要経費と利潤を合計したのを埋め合わせできるように電気料金を決めろ」と書いてあるわけですから、電力会社としては儲けたかったら資産を持てばいいし
そうすれば電気料金を上げていくらでも儲けることができるという
事でこれまでもきたのです。

ただし、今回の東京電力の事故ように、全く予想もしなかったような事が起きてしまうと、東京電力だって簡単に倒産しちゃうっていう程の被害が出るわけですし、
いま、関西電力を含め他の電力会社も、
これまでは金儲けのためにつくってきた原子力発電所が一斉に不良債権になってしまうというというようなところに追い詰められているのですね。
ですから彼らとしては「なんとしてもそんなことは避けなければいけない」
いままでどおり「原子力とはいいものだ」という事を言い続けなければ、
赤字に本当になってしまうかもしれないというところにまで、追い込まれているのです。

西谷:
ちょっとね、こういう理解でいいですか?
たとえば火力発電をつくる、原発をつくる、原発の方がコストが高くなる、

小出:そうです。

西谷:
そうするとそのコストに3%乗せるから
高いものをつくっていた方が今までは儲かっていた訳ですね。、

小出:おっしゃるとおりです。

西谷:これはもうなんか、こう、消費者をバカにしたような話なんですが、

小出:本当にその通りなのです。

西谷:
もうひとつ僕が腹が立つのは、使用済み核燃料棒がありますね。
これも資産だと言って3%かけてたんですよね

小出:そうです。

西谷:使用済み核燃料って、ゴミじゃないですか。

小出:
私はゴミだと思うのですが、
電力会社の説明によると、
使用済みの燃料の中にはプルトニウムという物質が入っていて、
それが新たな原子力発電所の燃料
になるのだからそれは資産だ
」と言っていたのです。


西谷:核燃料サイクルは、破たんしてるじゃないですか。

小出:
本当にそうなのです。
ですから、その事を言えば、電力会社が言ってきた事、あるいは経産省が認めてきた事、日本の国家が進めてきた事という事は、本当にはあり得ない事なのですが、
でも、「あり得ない事を、きちっと制度として作ってしまった」がゆえに、
どこまででも金儲けができるという事になったのです。

西谷:
福島第一原発でですね、使用済み核燃料をあれだけ抱えていて、この危機を起こしたわけですが、それが資産で3%を乗せて私たちの電気料金に跳ね返っていたという事は、返す返すも腹が立つ事実なんですけれども

小出:本当に腹が立ちます。

西谷:
それとですね、原発の寿命は20年と言われていて、
この前の関西電力株主総会は40年の美浜をさらに20年、60年使うと言ったんですが、

小出:そうです。

西谷:
この考え方は、一回コストをかけた原発を毎年3%ずつ乗せていくから、
電力会社としては20年で終わるよりは40年続けた方が儲かるという、
そういう事でしょうか?

小出:
もちろんです。
えっと、いま西谷さんは20年とおっしゃったけれど、
確か私の理解では、原子力発電所のいわゆる原価償却期間っていうのは16年だったと思います。

西谷:あ、そうですか。

小出:
ごめんなさい、私が間違えているかもしれない、20年かもしれないのですが、
要するに16年か20年使ってしまえば、施設としては価値が無いし、税金も払わなくて済むようになるんです。
固定資産税を払わなくても済むようになる

そうするとあとは、使えば使うだけただ金儲けができるという、そういう事になってしまう訳ですから、電力会社としてはうまい話なんですね。

西谷:だから、ずーーーっと使いたいわけですね。

小出:
そうです。
動く限りは固定資産税も払わなくていい、
ひたすら金だけ儲ける事が出来るのですから「使いたい」という事になってしまいます。

西谷:じゃあ、逆に廃炉にすると、その資産は無くなるから、3%乗せる事が出来ないという事ですね。

小出:もちろんできませんし、廃炉の費用が膨らんでくる訳ですね

西谷:ダブルで損をするというふうに考えているんですね、彼らは。

小出:はい。

西谷:
あとですね、もうひとつ。
コマーシャルをやっていますよね。
コマーシャルもこれは必要経費なので
結局、コマーシャルというのは普通の企業でしたら自分のコストでやるんですが、
彼らはそのコマーシャル分も電気料金で


小出:そうです。

西谷:
これはですね、
「節電お願いします」というコマーシャルをしてますよね。してましたよね。
という事は消費者にお願いをして、そしてそのお願いしたコマーシャルも消費者から取っていたと。

小出:
そうです。
マスコミを自由に扱うように、マスコミに金をばらまいて、それを消費者から徴収しているのです。

西谷:
本当に、この仕組みを変えないといけませんが、
これは今回の電力改革で、総括原価方式、出てきているんですけれども、
まだまだ続けそうですよね、この様子じゃ。

小出:
今の状況でいうと、日本の官僚というのは、「自分の既得権益を守ろう」とするわけですし、財界と官僚が結びついてしまっていますので、
総括原価方式というのを覆すというまでに派、まだまだ時間がかかると思いますし、電力会社の抵抗もずーっと続くだろうと思います。

ただしいずれにしてもこのままでいかれる道理はありませんので、
電力自由化という流れもどんどん加速していますので、
いずれ、破たんすることは分かっているし、
「電力会社の経営者というのならちゃんと未来の事まで見てくれよ」と私は思います。


西谷:
今回の株主総会でも、経営陣に何千万円という手当が出るわけですが、
これ総括原価方式だったら、別に誰でもできるじゃないですか。

小出:
むしろ、そうです、
それでその経営陣に膨大なお金を払っても、それは全部電気料金として私たちが払ってしまっているのですね。

西谷:
あの…、ほんとにね、怒りを通り越して、なんか笑ってしまうような話なんですけれども、
これ、廃炉の積立金がものすごく不足しているという話もありましたが、
先生、この廃炉の事については、これから、今後、廃炉にしていってほしいと思うんですが、
やっぱり膨大なお金がかかるんですか?

小出:もちろん膨大にかかりますし、現在考えているようなお金では到底足りませんので、

西谷:足らないですか、やっぱり。

小出:到底足りません。

西谷:到底足りない。

小出:
はい。
遥かに膨大なお金が必要になりますし、
そのために、それもまた未来の子どもたちが電気料金として負わせられることになると思います。

西谷:
これはしかし、なんていうか今すぐにでも止めて廃炉にしていっても莫大なお金がかかるという事は、
さらに延ばして再稼働させてツケを遅らせて、
また核燃料サイクルの分もツケですし、
そういう意味では本当に、なんかこう、将来の事を考えるとますますツケが広がっていくんじゃないですか?

小出:
そうです
私は「全ての原子力発電所を即刻止めて廃炉にしろ」と主張しているわけですけれども、それをやろうとすると膨大なお金が必要になって、それを私たちが負担をせざるを得なくなると思います。
ただ、それを嫌って問題を先延ばしにするのであれば、
負担はどんどんどんどん膨れ上がってくるだけですので、
やはり一刻も早く決断をして、これまでのツケというのを払うしかないと私は思います。


西谷:
先生、多重債務者がですね、
この借金を払うためにまたよそで借金して、雪だるま式に膨らんでいくのとよく似ていますよね。

小出:いま、その通りの事を電力会社がやっているのです。

西谷:
だからここで思い切って英断をして、即刻止めて、
そして廃炉にしていくというのが一番安い方法なんですね?

小出:傷としては浅くすむと思います。

西谷:
総括原価方式と、そこに一社しかないという、私たちが選べないという、
この二つは絶対に変えないとだめですね。

小出:
いまの電力というのは地域独占という事で始まったわけですす、
独占企業であれば何らかの形で電気料金なら電気料金を決めるしかなかったわけです。
それで、ま、総括原価方式というのをやったわけですけれども、
そのやってきた結果というのが今日のような事になっているわけで、
気が付いたのならば帰るしかないと思います。

西谷:
そうですね。
今日は小出先生と総括原価方式をテーマにやりましたが、
このテーマでまたもう一回やりたいですね、先生。

小出:はい、またお願いします。




電気料金の驚異の”からくり”「総括原価方式」←これは知っておくべきですね。(内容書き出し)
2011年7月のそもそも総研で、とてもわかりやすく説明しています。
小出先生も出演していらっしゃいます。