安倍首相の“明治礼賛”に批判と抗議

安倍首相の“明治礼賛”に批判と抗議

 政府は23日、「明治150年記念式典を開催しまし。安倍首相の「明治150年観」に対する批判としては、ある意味で22日付の東京新聞社に尽きていますが、琉球新報沖縄県人の立場から式典を批判する「社説」を掲げました。

 琉球新報は、「安倍首相は『日本を取り戻す』というスローガンを掲げ、特定秘密保護法、安全保障関連法、共謀罪などを国民の根強い反対を無視して成立させてきた。戦前の強権国家の再来を懸念する。なすべきは明治150年を礼賛するのではなく、歴史に学び、植民地支配や戦争を二度と繰り返さないと誓うことである」と述べています。
 
 また政府の「明治150年記念式典」に抗議する緊急集会が23日、衆院第2議員会館で開かれました。集会で高島伸欣琉球大名誉教授は、式典は「安倍首相のように小学生以下の歴史認識の人が、歴史を政治利用」するものであるなどと批判しました。海外膨張の帝国主義を説いた吉田松陰を、いまもなお尊敬すると公言している安倍首相への痛烈な批判です。
 琉球新報日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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<社説>明治150年式典 礼賛よりも反省すべきだ
琉球新報 2018年10月24日
 政府が「明治150年記念式典」を開催した。近代化を成し遂げた先人の偉業を振り返
り現代に生かす狙いという。侵略、戦争で国内外に甚大な被害を与えたことを反省して、
現在と未来に生かすのでないなら、式典を開く意味はない。
 
 安倍晋三首相は式辞で、今を「国難の時代」とし「明治の人々が、勇気と英断、たゆまぬ努力、奮闘によって、世界に向けて大きく胸を開き、新しい時代の扉を開けたことに思いをはせながら、私たちは、この難局に真正面から立ち向かい、乗り越えていかなければならない」と述べた。
 そして若い世代に向け「この機会に、わが国の近代化に向けて生じた出来事、人々の息遣いに触れ、光と影、さまざまな側面を貴重な経験として学び取って
ほしい」と呼び掛けたが「影」の部分について具体的に説明しなかった
 
 政府主催式典というと2013年4月28日の「主権回復」を祝う式典を思い
起こす。1952年にサンフランシスコ講和条約発効で日本が独立を回復した
一方で、沖縄や奄美は分離され米統治下に置かれた。この日を「屈辱の日」と
してきた沖縄では、式典に強い反発が起きた
 沖縄から見ると、明治150年の前半はアジア太平洋戦争と沖縄戦で終わった。そして後半の始まりが「屈辱の日」である。日本に復帰して46年を経た今
も米軍専用施設面積の約70%を押し付けられ、民意を踏みにじられ続け、事実
上の植民地支配、差別を受けている。式典会場近くで批判する集会が開かれた
のは当然である。
 
 安倍首相は、幕末に松下村塾で維新の志士たちを育てたという吉田松陰を尊
敬し、演説でしばしば引用してきた。その松陰は「幽囚録」で次のように説いた。
今、急いで軍備をなし、軍艦や大砲が備われば、蝦夷(北海道)を開墾して
諸侯に統治させ、間に乗じてカムチャツカ、オホーツクを奪い、琉球を説得して諸侯と同じようにさせ、朝鮮を責めて古代のように従わせ、北は満州(中国東
北部)を分割し、南は台湾、ルソン(フィリピン)を収め、次第に進取の勢い
を示すべきである
 
 まさにこの通りに、近代日本は膨張政策を推し進めた。1879年の「琉球
処分」(琉球併合)と、アイヌ民族の土地を奪って進められた北海道開拓が、
本の膨張政策の始まりだったことを忘れてはならない。そしてその結末が、
アジア太平洋戦争の惨禍と連合国による占領だった。
 安倍首相は「日本を取り戻す」というスローガンを掲げ、特定秘密保護法
安全保障関連法、共謀罪などを国民の根強い反対を無視して成立させてきた。
戦前の強権国家の再来を懸念する。なすべきは明治150年を礼賛するのでは
なく、歴史に学び、植民地支配や戦争を二度と繰り返さないと誓うことである。
 
 
安倍首相の“明治礼賛”に抗議 歴史歪曲を許すなと怒りの声
日刊ゲンダイ 2018年10月24日
 政府主催の「明治改元150年記念式典」に抗議する緊急集会が23日、
衆院第2議員会館で開かれ、出席者らが「侵略の歴史を隠蔽し日本の近現代史
の歪曲・捏造は許されない」と怒りの声を上げた。
 
 集会は「村山首相談話を継承し発展させる会」が主催。会場には立ち見の
参加者も出るなど、200人以上が出席した。
「明治150年礼賛式典を村山首相談話の視点から斬る」と題してスピーチし
た高島伸欣琉球大名誉教授は「安倍首相のように小学生以下の歴史認識の人が、
歴史を政治利用している」と語り、安倍政権の明治礼賛姿勢に警鐘を鳴らした。
 
 このほか、政治評論家の森田実氏や元外交官の孫崎享氏、元文科官僚の
寺脇研氏らが登壇。孫崎氏が「明治礼賛というが、明治という時代が第2次
世界大戦をもたらしたことを忘れてはいけない、その問題を検証しなければな
らない」と語気を強めると、出席者らがうなずいたり、拍手したりする場面も
あった。