たった一人で竹中排斥を訴えた東洋大生が 大学に公開質問状

たった一人で竹中排斥を訴えた東洋大生が 大学に公開質問状

 東洋大4年生の船橋さん(23)は1月21日、白山キャンパス南門付近に「竹中平蔵による授業反対!」と書かれた立て看板を設置し、「この大学はこのままでいいのだろうか?」と題するビラをまきました。すると10分後に大学職員に制止され、学生部の部屋に連行され、2時間半、叱責されました。
 船橋さんは「竹中さんのことは、予備校時代に知った。2003年の労働者派遣法の改正を主導し、非正規雇用の労働者をこれほどまでに増やした。パソナの会長をしながら政府の諮問機関で利益誘導していることより、それ自体が問題。左右を問わず、誰が見てもおかしい」と、誰にも、どの組織にも頼らずにたった一人で南門に立った動機を明かしました。
 
 小泉内閣時代に突如閣僚として登場し、小泉氏の郵政民営化に便乗して米資本本位の郵政改革を仕上げ、以後今日にいたるまで諮問委員の立場を利用して、一貫して反労働者政策の実施に努めてきた竹中氏を、学園から排除しようとする学生が現れることは極めて自然のことです。しかもそれをたった一人で実行した船橋さんの勇気と正義感は賞賛されこそすれ、退学を強制されるというようなことではありません。一体どういう大学なのかという話です。
 
 大学に採算性を求め、実学を偏重し哲学等の人文科学系の学部・学科を軽視した大学改革は、学問を尊重するのであれば絶対にやってはならないことでした。しかし軽薄な安倍内閣は経済界に要求されるがままにそれを実行しました。これも安倍政権による「日本の破壊」に他なりません。
 船橋さんの訴えは、本質的で極めて重要なことなのですが、どういう事情からかそれが広がりませんでした。残念なことです。
 
 彼が2月11日、大学側に抗議文と公開質問状を送付したことが Net .IB Newsサイトに掲載されたのを機に、植草一秀氏がこの事件の概要を紹介しました。
 
 植草氏は、竹中氏が閣僚であった時にその経済政策や金融機関への不正な仕打ちを徹底的に批判したため、官憲によって痴漢の冤罪を仕掛けられ、結果的に第一線から退かざるを得なくさせられました。
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適正な対応迫られる学生恫喝の東洋大学
植草一秀の「知られざる真実」 2019年2月13日

東洋大学白山キャンパス(東京都文京区)で1月21日、「竹中平蔵教授による授業反対!」の立て看板を掲げ、ビラを配布した学生が学生部に連行され、「退学」にも言及して2時間半叱責された事案に関して、当該学生の船橋秀人(ふなばし・しゅうと)さん(23)が2月11日、大学側に抗議文と公開質問状を送付した。
 
「反ジャーナリスト」の高橋清隆氏が Net .IB Newsサイト上に記事を掲載された。
 
東洋大立て看事件】学生が大学に抗議と質問状、
 「事実関係を残したい」 ⇒  
  https://www.data-max.co.jp/article/27800?rct=nation 
 
上記記事によると、
船橋さんが提出したのは「抗議と謝罪要求」と「公開質問状」の2文書。
いずれも簡易書留郵便で2月11日に投函された。
前者は2枚資料で竹村牧男・同大学長に、後者は3枚資料で同大理事会に宛てられたもので、1週間以内に本人にメールで回答することを求めている。
以下、高橋氏掲載記事より引用させていただく。
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「抗議と謝罪要求」では、学生部学生支援課の職員に2時間半にわたって詰問された経緯を説明。
その際に遭遇した「恫喝(どうかつ)」「身体的拘束」「表現の自由に対する過剰な干渉」「広報の不当」に関する4つの不法・不当行為を挙げ、大学を代表する同学長に謝罪を求めている。
「恫喝」については、学生部の一室で「就職先での立場が危うくなるぞ」「大学のイメージを下げているんだぞ。責任を取れるか」などと執拗(しつよう)、または大声で脅されたことを明かし、「これらは明らかな暴力です」と訴えている。
 
「身体的拘束」については、職員5〜6人による恫喝が身体的自由を奪われたかたちで行われたことを挙げ、仮に禁止事項違反の非があったとしても、度を超していると指摘。
憲法18条で保障された『身体の自由』を侵す行為であり、刑法にふれる人権侵害」と告発する。
表現の自由…」では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の投稿を削除するよう迫られたことに触れ、憲法21条で保障された『表現の自由』の侵犯」と指摘。
さらに「大臣を歴任し事実上の公人である竹中氏への批判は、個人の誹謗(ひぼう)中傷にあたらないはず」とつづり、長時間にわたる強い削除要求は越権行為だとしている。
「広報…」では、報道各社の取材に対して「禁止行為を行うと場合によっては退学処分になることを当該学生に説明した」と釈明していることを取り上げ、「これこそ退学の勧告といえます」と反論した。
 
立て看設置とビラ配布は『学生生活ハンドブック』に禁止事項として記載されているが、学則のどの条項に基づくかが明記されていないと指摘。
「それにもかかわらず、学生部職員は、一方的に学則57条に該当する可能性があると脅してきた」と糾弾している。
「公開質問状」は、同学生が抗議活動を行う原因となった、現在の同大学の問題点を記す。
すなわち、
(1)「弱者切り捨ての竹中平蔵氏を大学で教鞭を執らせることについて」
(2)「実学偏重と人文系学部軽視について」
である。
 
具体的に、
(1)は「『正社員をなくしましょう』などと公言し、新自由主義的な政策によって、多くの国民の基本的人権を踏みにじるような人間を教授として招くことは、本学の理念である『知徳兼全な人材の育成』に反します」と始めている。
竹中氏が推進した労働者派遣法改正によって、労働者のおよそ3人に1人が非正規雇用になっている状況を説明した後、同氏が同大ホームページに掲載されている新任インタビューで「グローバル・イノベーション学」の正当性について述べた主張を引用し、「つまり竹中氏は、いまだ弱者を切り捨てる考えを護持し、今度はそれを学生に教え込もうとしていると考えざるを得ない」と両断する。
 
(2)では、「インド哲学科」「中国哲学文学科」など哲学系学部を統合再編して定員を削減する一方、「国際観光学科」の学部独立や竹中氏の所属する「グローバル・イノベーション学科」を含む「国際学部」開設など国際系学部学科を拡充してきた経緯を説明。
竹中氏が「グローバル・イノベーション学研究センター長」に2016年までに就任していた事実を示し、「人文系軽視・実学偏重」路線すなわち「学問軽視」の姿勢が「無駄を削除して競争力を高めようと唱える竹中平蔵氏を教壇に招いていたことに象徴されています」と指弾する。
 
その証左として、竹中氏が国公立大学の民営化、つまり国から大学の補助削減を提言し、『毎日新聞』の取材で「東大の土地を貸しビルやショッピングセンターにして、その上がりで研究すればどうか」と発言していることを挙げ、「大学も企業と同じようなコスト競争に晒(さら)すべきだと主張している」と批判する。
「これは学問の府のあり方として深刻な問題です。なぜならば、本来大学とは、短い期間で成果を上げる企業とは異なり、長い年月による積み重ねをもとに社会貢献への糸口を探る場であるべきだからです。もし大学が企業と同じように目先の利益ばかりを追求するようになれば、短期的な成果主義によって学問の自由という大学本来のあり方が壊れてしまいます」
こう指摘し、同大の現状が「諸学の基礎は哲学にあり」とする建学の精神に反していると結ぶ。
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大学の学内において積極的な発言と行動を示した学生の勇気ある行動に賛辞を表明したい。
大学側の対応は、言論の府である教育現場を預かる者として、品格を欠いたものであると言わざるを得ない。
言論の府が言論を封殺するのは言論の府としての自殺行為である