東京新聞『こどもの日に考える 未来を築く人たちへ』

m u s h i n 1 9 6 7 さんのブログで見つけました
 
今日、2012年の「こどもの日」に、日本の原発がゼロとなります。
今、私たち大人が、現在の、また、未来のこども達のために、何をしなければならないのか、を真剣に考え、実行していくための特別な日にしたいと思います。
以下、東京新聞の本日の社説より。
 
 
 
原発ゼロ。特別なこどもの日。日本中どこの空にもこいのぼりが泳げるよう、大人たちが考え、話し合い、子どもたちより一足早く、行動を始める日。
 浜通りの潮風に、こいのぼりが躍っています。ことしは時折、手作りらしい緑色の小さなコイが、軒先で泳いでいるのを見かけます。原発のない未来を表す緑には、何色の風が似合うでしょうか。そんなことを考えながら、黄色い表紙の小さな絵本を開いてみます。
 「放射線になんか、まけないぞ!」(太郎次郎社エディタス)。福島県郡山市赤木小学校教諭の坂内(ばんない)智之さん(43)が福島の子どもたちのために書きました。

◆正しく恐れることは

 イラストは岐阜県土岐市の柚木ミサトさん、監修は独協医科大准教授の木村真三さんが、それぞれ担当しています。
 坂内さんと木村さんは紙幅の大半を費やして、放射線に関する素朴な疑問に答えます。
 放射線とは、人の体をすり抜けていく不思議な光のようなもの。
 その時に、かすかに体を傷つける。一度にたくさん浴びたりすると、小さな傷も治らなくなり、それがもとで重い病気にかかることがある。
 そうならないよう除染をするが、放射線放射能放射線を出す力)が、人から人にうつるというのは大まちがい-。
 何かを正しく恐れることは極めて難しく、そのためにはまず正しい知識が必要です。しかし、坂内さんが子どもたちに伝えたいのは、知識だけではありません。本当に大切なのは、正しく知って、正しく恐れ、乗り越える手だてを考えて、行動を起こすこと。この先何十年もの間、放射線とかかわりながら生きていく、福島の子なら、なおのこと。

◆地域のことは地域で

 坂内さんは「未来を生きるのは子どもたち。未来を築くのも子どもたち。だから、彼ら自身で未来を考え、話し合い、行動できる大人に育ってほしい」と願っています。そして、巻末に「わたしはみなさんのちからに、とても期待しています」と、メッセージをしたためました。
 福島だけではありません。3・11を心の節目に、「行動できる大人」を目指して、若い世代は考え始めているようです。
 「脱原発×STOP浜岡」代表で国際基督教大二年の関口詩織さん(19)に、原発を止めて将来、どんな社会をつくりたいかと尋ねると、「地域のことは地域で考え、地域で決めてもいい社会」と、即座に答えてくれました。
 例えばエネルギー一つとっても、需要に応じて右肩上がりに供給量を増やせる時代はそろそろおしまいです。供給力が許す範囲で、需要を賢く柔軟に、組み立てなければなりません。
 関口さんは、大小の電力会社と消費者が同じ土俵で話し合い、必要な量を地域で決めて地域でつくる、身の丈に合った地産地消の供給網を思い描いています。
 「化石燃料が底をつき、経済が傾き始めた今、ようやく私たちの出番が来たかと、正直ワクワクしています」。愛知県岡崎市養護学校で教える星野百合子さん(27)は、本音を語ってくれました。
 大戦後の焼け跡に、先人が敷いたレールの上をひたすら進んでいくしかない、与えられたものの中から将来を選択するしかないと、あきらめていた。ところが、経済万能、大量生産、大量消費の価値観が大きく揺らげば、自らの居場所を創造できる。
 「目標は“国創り”。人ごとではなく“自分ごと”として、物事を考える人が集まれる場所をつくってみたい」と夢が膨らみます。
 今日から、この国は原発ゼロ。それだけで、何かが良くなるわけではありません。降り注いだ放射能は消えません。日々の暮らしは大量の電気を必要としています。根本的な解決は、次世代に託されます。しかし、福島の事故から一年余。私たち大人も、もういいかげん変わらなければなりません。考えて、決めて、行動できる自分を取り戻さねばなりません。

◆五月の空を取り戻し

 こどもの日。大人には“風送り”の日。子どもたちが五月の空を健やかに泳ぎ回れるよう、新しい風を送り続けたい。
 特別なこどもの日には、特別な緑の風を吹かせましょう。あらためて約束します。私たちは、みなさんの命と未来を脅かす原発への依存を反省し、持続可能で豊かな明日へ、迷いなく歩いていくと。
 みなさんには浜通りのすべての海岸線に、いつかまた五月の空を取り戻し、こいのぼりを自由自在に泳がせてもらいたい。みなさんの知恵と力に、私たちも、とても期待しています