宮沢賢治の歌詞でドヴォルザーク「新世界」第二楽章をどうぞ!


先日、友人に連れられて・・六甲オルゴールミュージアムに行ってきました。
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素敵な庭と建物です。庭には季節の花がいっぱい・・。

六甲オルゴールミュージアム

六甲山上にある自動演奏楽器専門の博物館。19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパやアメリカで親しまれていた自動演奏楽器を所蔵し、展示と実演が行っている。アンティーク・オルゴールとともに自動演奏オルガンや自動演奏ピアノ、自動演奏ヴァイオリンなどさまざまな種類の自動演奏楽器の音色を楽しむことができる。

いろいろなオルゴールがあります。
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こちらは、ヴァイオリンとピアノの演奏をしてくれるオルゴールです。
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                友人に連れられて・・と、言うのは、
友人の助けがないと聴力低下の私一人では楽しめないからです。
その日は、特別展「宮沢賢治の音楽世界~オルゴールが紡ぐ物語~」
(2015年04月17日~2015年07月09日まで)が開催されていました。
友達が隣で、説明をメモしてくれました。
銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』などの文学作品で知られる
宮沢賢治(1896年~1933年)は音楽に造詣が深く、
作詞作曲もしますし、作中にクラシックの曲も登場します。
              
この日の【演奏曲目】は・・・ 
宮沢賢治作詞作曲 星めぐりの歌」(『銀河鉄道の夜』、『双子の星』より) 
 ドヴォルザーク作曲 交響曲第9番「新世界より」第二楽章(『銀河鉄道の夜』より)
シューマン作曲「子どもの情景」より「トロイメライ
(『セロ弾きのゴーシュ』より)
 

星めぐりの歌、をオルゴールで聴きました。
「どんな歌?」と聞くと、「温かみのある歌・・」と友。
私ももう一度聴きたくなってYouTubeを探してみました。
あかいめだまの さそり   ひろげた鷲の つばさ    あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。   オリオンは高く うたひ   つゆとしもとを おとす

アンドロメダの くもは     さかなのくちの かたち   大ぐまのあしを きたに
五つのばしたところ。     小熊のひたいの うへは   そらのめぐりの めあて


どちらも同じ人が歌っています。  透明なきれいな歌声です。

ドヴォルザーク作曲 交響曲第9番「新世界より」第2楽章
これは、ご存じの「遠き山に日は落ちて♪」ですが、実は、これよりずっと前に、
この曲を聴いて感動し、自分で詩をつけて歌っていた人がいました。
それが宮沢賢治です。
賢治は「新世界」のメロディーを日本語の歌曲として歌った最初の人です。

詩は「種山ヶ原」。

紹介があったこの詩、とてもすばらしいものでした。


「種山ヶ原」   宮沢賢治   (「遠き山に日は落ちて」のメロディで歌う)

春はまだきの朱(あけ)雲を  (春の早朝 茜色の雲の見える景色の中を)
アルペン農の汗に燃し  (厳しい農業の仕事に汗して、自分の精神を鍛える決意に燃え)
縄と菩提樹(マダカ)にうちよそひ (縄と蓑という粗末な服装で身支度をし)
風とひかりにちかひせり。     (風と光に、自分の生き方を誓うのであった)
  四月は風のかぐはしく     (4月の風はかぐわしく)
  雲かげ原を超えくれば    (雲かげ原を超えてやってくる)
  雪融けの草をわたる。     (雪融けの草原の上を越えてやってくる)

(めぐ)る八谷に劈靂(へきれき) (たくさんの谷に囲まれた種山ヶ原は、しきりに雷雲が立ち雷が鳴るので)
いしぶみしげきおのづから    (雷神を祀る碑も多くある。そんなわけで自然と)
種山ヶ原に燃ゆる火の       (種山ヶ原に燃える火の)
なかばは雲に鎖(とざ)さるゝ。    (半分は雲に閉ざされてしまうのだ)
  四月は風のかぐはしく     4月の風は良い薫りとともに)
  雲かげ原を超えくれば    (雲かげ原を超えてやってくる)
  雪融けの草をわたる。    (雪融けの草原の上を越えてやってくる)

アルペン農とは・・厳しい環境の中で辛い仕事を自分に課して自分の精神を鍛えようとする農の営みのことを指すようです。いかにも賢治らしいですね。
そして、賢治にとって「アルペン農」は、「種山ヶ原」の農家のイメージのようです。
(こちらの記事を参考にしました。http://news.ouu-yamazato.com/?eid=758384)

この曲を耳にした賢治には、
4月の風と光を感じながら
      種山が原のアルペン農が、額に汗して農作業に勤しむ・・
そんなすがすがしいイメージがあったのでしょう。
もちろん、「遠き山に日は落ちて」の詩はまだ生まれていなかったので、
賢治の知るところではありません。

「遠き山に日は落ちて」の歌詞は好きなのですが、
夕闇の世界と「新世界」の曲想が、私には多少違和感がありました。
個人的にはこの軽やかなメロディに、賢治の思い描いた「種山が原」の詩情の方が似合っているように思いました。(あくまで個人の好みですが・・)
このとき、賢治が思い描いた情景はコロラド高原・だったそうです。
銀河鉄道の夜」のなかで、いちめんのとうもろこし畑からこの旋律が流れてきて、女の子が「新世界交響楽だわ」とつぶやき、ジョバンニが「さうさうこゝはコロラドの高原ぢゃなかったらうか」と思うとき、実際の汽車の動きは、あたかも岩手軽便鉄道北上山地を西へ、花巻の方へ向かっているところのような描写になっています(「種山ヶ原 詩群」参照)。  賢治は、種山ヶ原を含む北上の高原を、アメリカのコロラド高原に重ねあわせていたのではないでしょうか。そして、農業には不向きなこの地の酸性土壌を、いつの日か新大陸の農業技術も応用して開墾し、豊かな稔りの土地へと変えることを夢見て、この歌に託していたのではないかと思いますhttp://www.ihatov.cc/song/tane.html  
★皆様はどちらがお好きですか?

1,遠き山に日は落ちて  星は空を 散りばめぬ  今日のわざを なし終えて
心かろく やすらえば  風はすずし この夕べ   いざや 楽しき まどいせん
2,闇に燃えしかがり火は  炎 今は 静まりて   眠れやすく 憩えよと
誘うごとく 消えゆけば   やすきみ手に守られて   いざや 楽しき 夢を見ん
★「家路」の歌詞を追加しました(7月1日)
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オルゴール館に戻ります。

楽しそうな音楽を自動演奏。
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その裏は・・・こんな具合になっていました。
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自動演奏の楽譜??です
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このあと、シューマンの「トロイメライ」もオルゴールで聴きました。
友が筆記で、「次の演奏はトロイメライ」と教えてくれます。
曲名がわかると、メロディーが記憶からよみがえって、
それらしく聴くことができました。
晩年?に、聴力低下の試練が来るとは思いませんでしたが、
こうして助けてくれる友人に恵まれたことを、感謝しています。


宮沢賢治が思い描いたコロラド高原といえば、ヴォーリズが高校時代を過ごしたところ。今年もヴォーリズの発表があるのでそろそろ勉強開始です。

今日は、近江八幡へ「高尚なる同志 ヴォーリズ新島襄」の講演を聴きに行きます。晩はヴォーリズつながりでできた友人のところにお泊まり。
日曜日は彼女と一緒に、歴史ある近江八幡教会の礼拝に参加してきます。
しばらくブログは、ゆっくりペースになりますが、よろしくお願いします。