キリスト教私学の先生から生徒さんへのメッセージ。政治の話も伝えています。

大阪のキリスト教系私学の先生のメッセージです。

▼生徒さんたちとの会話

 私は、ずいぶん前から学校の教室で、生徒さんたちと一緒に日本の安全保障、平和、戦争、原発による汚染についてお話ししてきました。もちろん聖書そのものについての授業もするのですが、ちょっと話題がずれて少し雑談をするたびに平和の話になって、生徒さんたちとやりとりをするわけです。
 去年あたりまでは、中学生は「先生、平和、平和、戦争反対なんて言ってたら、中国・韓国に舐められますよ」とか、「あいつらにバカにされてるって悔しくないですか。」とか、やんちゃな男の子たちがまるで運動会のクラス対抗試合みたいなノリでニヤニヤ笑いながら私の話をなかなか聞いてくれません。

高校生の中には、「中国はいつ侵略を始めるかわからない。現実に尖閣諸島を取られてしまうかもしれない。そういう現実に対して、先生は一体どう対応すればいいと考えているんですか!」と非常に興奮気味に話す生徒さんがいました。
 今年になってから、安保法制の論議が具体的に国会で始まって、子どもたちがそんなに詳細にニュースを見ている様子は無かったのですが、しかし、そういう威勢のいいことを言う子は少なくなりました。

         そこで、例えば日本と中国がなぜ戦争をしてはいけないか、尖閣の問題は個別的自衛権で解決出来る問題ではないのか、集団的自衛権に踏み出してしまうと、アメリカと一緒に有志連合に入れられて、アメリカの戦争の下請け軍隊にされてアメリカの敵国での戦争に巻き込まれてしまうかもしれないよ、という話をすると、やはり何も知らなかったようで、「えー?」と驚かれます。

       すると今度は「俺は戦争には行かない」と言い張る子が出てくるんですね。すると、「けれどね、わからないよ」と私は言います。
 「いま戦争の危険が迫っていると感じて、自衛隊になる人が減っているし、辞める人も増えている。だから兵隊を確保するために徴兵制、つまり何年間が兵隊になるのを義務付ける法律ができるかもしれない。そうなったら、あなた自身が兵隊をやっている間にもし戦闘が始まって、前線に生かされたら、体や頭や手足が吹き飛ばされ、内臓が飛び出たり、全身真っ黒焦げになってブスブスいいながら人が死ぬ世界に放り込まれるわけだね。相手をそうやって殺さないといけないし、自分がそうなるかもしれない。そんな景色ばかり毎日見ながら、自分がいつ殺されるかわからん」という緊張とストレスで、たくさんの人が心の病気になって自殺したり、帰ってきてから家庭を破壊する人も、普通に仕事をすることもできなくなってしまう人も多い。さて、そういう状況に放り込まれたい?」と聞きます。
 大抵の子が「えー、いやだー!」と言うか、黙り込んでしまいますね。
 「だから、選挙権も18歳からに引き下げられたこともあるし、しっかりいまから考えて、ぼくは『どこの政党に入れなさい』ということは言えないけれど、自分の将来がどうなるのかをよく考えて、絶対に選挙にはサボらないで行きなさいよ」と言っています。「選挙一つで自分の命がかかっているんだからね」と。

▼現代の奴隷制

 そして同時に「日本の若者の労働状況がどんどん悪くなっている。結婚も子育ても苦しいくらい貧困状態に陥っている若い人が次第に増えていっています。大学を出ても、大企業には就職できなかったり、フリーターになる子も増えているんだよね」という話もします。
 そんな中で、「これから先みんなが安定した会社で安定した暮らしをしたり、お金持ちになれる可能性は減って行くよ」と。
 そして、そこから私が、大阪で言えば釜ヶ崎、関東で言えば、私が直接見てきた限りでは横浜の寿という地区での日雇い労働者、そして、ホームレスになってしまってネットカフェなどで寝泊まりしながら単発の肉体労働でなんとか生きている若者たちに対して、現在も「お国のために役立つ仕事をやらんか」、「兄ちゃんが日本を救うことができるんやで」という誘い文句で……また自己肯定感の少ない若者はそういう誘い文句を聞くと「え、俺でもお国のために役に立つんか!」と血気盛んに反応するんですね。そして「その代わり命をかける仕事や。かまへんか」とハッパをかけられると「よっしゃ命かけたろやんけ!」と乗ってしまう。で、何をやらされるかというと原発労働者ですよ。
 原発の一番放射線量のきついところ、3年かそこらでガンや白血病で死んでしまって、全く身寄りもありませんから遺体もどこかに捨て去られるような、そんな名もない原発労働者がもうすでに少なくとも数万人は行方不明になっているんですよね。
 だから、原発労働者というのは、これは一種の奴隷制だと私は思っているわけです。もっとも、今は日本の原発は1基も実際には稼働していませんから、メンテナンスの作業だけで済んでいますけど、実際に再稼働し始めたら、そういう貧しい若者たちの奴隷労働と屍の上に私たちのエネルギーが供給されるということになってしまうわけです。こんな罪深い電気の使い方があるでしょうか?
 そして、次の奴隷の使い道が兵隊です。
 わざわざ若者全体に徴兵の義務を課さなくても、兵隊に入れば高卒の資格を与えて大学に入れる権利を与えるとか、特別奨学金を給付するとか特典をつければ、貧困に陥った若者が自分のため、また家族のためにどんどん進んで志願してくるでしょうから。
 こういうのを「経済的徴兵制」と言いますが、これも最近は時々マスコミにもやっとチラチラで見られるようになってきましたが、これもずっと前から予想されていたことです。釜ヶ崎に出入りしていたら、政府はいつかそうするだろうということはすぐにわかるんです。

▼体にダイナマイトをくくりつけた人間

 此の期に及んでまだ「なめられてていいんですか」と言う生徒さんには、「いまの日本は国が相手であれ、テロリストが相手であれ、相手が本気になったら絶対に勝てない」と言います。
 「なんでですか!」と彼らは言います。私は「相手を負かしたとしても、自分も負ける。今の戦争は誰も勝つ者がいないんよ」と言うんです。やっぱり「なんでですか?」と言われます。わけがわからないといった顔をしています。
 
私は「だって原発があるもん。こんな狭い狭い国土に、しかも地震津波も多いのに、世界で3番目に多い、54基も核燃料が濃縮された原子力発電所があるんやで。これにテロリストが労働者のふりして入り込んで自爆テロやったり、北朝鮮か中国からミサイルが飛んできて、一発でも当たったら終わり。こんな狭い日本で54基。ダイナマイトを全身にくくりつけている人間みたいなもんやね」と。
 「福島第一原発放射性物質の毒が200キロも離れた東京でも汚染して体調不良の人が増えているのに、たとえば今後、福井県原発が一発やられたら、京都は60キロしか離れてないし、大阪でも100から150キロ。みんな住めなくなる」。
 そういうと、また生徒さんたち絶句。

         しかしさすがに私も、先ほども申し上げましたように参議院での質疑で、そのような原発への攻撃を、政府が本当にきちんと想定しないまま法案審議を進めていた。しかもそれを衆議院でも論議してない。与党も野党も何をやっているのかと唖然とせざるをえなかったですね。 (続く)