星林月船(2)

「人は亡くなるとお星さまになるんだよ。」と、子供心に聞いたことがある。

私も、大切な人が亡くなると、「星」になったのだ…と思いたかった。

星なら、昼間は明るくて見えないけれど、晩は光って存在を見せてくれるし、

何より、宇宙の彼方から見守っていてくれる・・という感覚が良い。

神様が私たちを見守っていてくれるという感覚も、きっとこれに近いような気がする。

いつもそばにいてくれているようで、少し元気が出るし、

そう思うことで、

この世に姿が見えなくても、しっかり生きなくちゃ…!と思えた。



千の風になって」という歌もあるけれど、

通り過ぎていく風よりも、

遠くから見守っていてくれる…という感覚の方が、

私には慰められた。

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「星林月船」という言葉に出会ったのは、夫が亡くなってまもなくのことだった。

これは、言葉と言うよりも、万葉集の歌の一部である。

満天の星空の中を漕ぎ行く船・・という古代人のスケールの大きな想像力に感心しつつ、

月を眺めていたら・・ふとこんなことを考えた・・・。


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一度だけでいい、・・月の船に乗り、夜空の星たちに会いに行けたら・・・。

地上ではもう会うことができない、

星になった父や夫や友たちと

夜空で再会できたらいいのになぁ・・・と。


亡くなった人にもう一度会いたい…という気持ちは、「愛」?

大切な人だから…もう一度会いたいし、もう一度愛を伝えたい。



死は、突然やってくるから、

伝えたいと思っていた言葉も

いつか言おうと思っていた言葉も、

言えないままにお別れしてしまう。


父も、夫も、友人も、・・・

突然の死に、私は、何も言えなかった。

言う時間もなかった。


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全く親孝行ができないままに逝ってしまった父。

不器用な自分を、一番理解してくれていた。

いつも、陰で、私の味方になってくれて、ありがとう・・。

父の支えがなかったら、今の私はなかった。

親孝行ができなくて・・それだけが心残り。

今、亡くなった父と同じ年になって、

人生のいろんな味がちょっとわかるようになりましたよ。

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もっと長生きしてもらい、共に人生を楽しみたかった夫。

貴方と暮らした日々は、私の人生の宝物。

理想の人にほとんど近かった貴方

広い地球で、あなたと巡り会えた幸せを喜びましょう。

「もう一度生まれたら、また、結婚しような」

最後の日の枕元で・・・、

私も同じ言葉をあなたに言いたかった・・。


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学生時代の思い出の貴女そのままで、不慮の事故で亡くなったKさん

大阪に来て慣れない私に、子供たちと共に仲良くしてくれたYさん

大切な友を失うことは、

人生の喜びの半分を失うくらい寂しいものだって・・

しみじみとわかったよ。



 夜空に浮かぶ月の船に乗りこんで・・・亡き人の星に語りかけたい。