福島原発以上に危険性のある高速増殖炉『もんじゅ』で今起きていること(1)

福島原発以上に危険性のある高速増殖炉もんじゅ』で今起きていること(1)

シバさんのブログ『Dive into the Tech World!』からご寄稿いただきました。
福島原発以上に危険性のある高速増殖炉もんじゅ』で今起きていること
今話題になっている原子力発電所の話を書きたいと思います。自分で調べてみると「高速増殖炉もんじゅ”って危ないな」ってことに気づきました。
福島原発も難しいことになっていますが、『もんじゅ』も現在も危険な状態になっています。それについてまとめてみました。
非常に長文になりましたので、時間があるときに読んでいただけるとありがたいです。特に福井県の方には自分たちの県のことなので読んでもらえたらと思います。
前置き
まずこの内容について書きたくなった理由です。僕は福井県勝山市の出身で、福井県には多数の原子力発電所があります。これまでは原子力発電所については全く知識がなかったのですが、今回の福島原発での事故をきっかけに、やはり原発はある程度の危険性があるということに改めて気づき、原子力発電所について調べてみることにしました。そうすると、高速増殖炉もんじゅ』はさらに危険であるということを知ったので、これまで勉強したことをまとめたいと思い、今回の記事を作りました。
また、先にひとつだけ断っておきたいことがあります。今回の記事は、インターネット上などで自分で調べたことをまとめたものです。また僕自身は、原子力発電所関連の仕事をしているわけではなく、ただの京都に住んでいる大学4年生で、趣味やアルバイトでプログラマーをしています。原発反対運動をしているわけでもありません。そのため、もしかすると不正確な内容があるかもしれません。もしそのような内容を見つけたら指摘していただけたらと思っています。
あともうひとつ。僕は不安を煽ろうとして、この記事を書いているわけではありません。今回の福島原発の事故をきっかけに、僕は原子力発電のことについて学びました。そうすると、今回福島原発についての報道を一歩引いて、客観的に判断できるようになった気がします。マスコミの言っていることを鵜呑みにするだけでなく、現状についての知識を共有したいと思って書いています。
軽水炉高速増殖炉
日本の原子力発電所は大きく分けて軽水炉高速増殖炉という種類があります。日本にある原子力発電所はほとんどが軽水炉であり、現在事故が起こっている福島原発軽水炉という仕組みで動いています。高速増殖炉は日本では二つしかなく、一つは茨城県東茨城郡大洗町にある『常陽』、もう一つは福井県敦賀市にある『もんじゅ』です。高速増殖炉もんじゅ』が僕の地元にあったことが、今回この記事を書く強い動機になりました。
軽水炉の仕組み
さて、軽水炉の仕組みはどのようなものなのでしょう? これに関しては、僕が調べてみた感じだと、「だからチェルノブイリとは違うって何度言えば分かるんだってばよ! 原発についてまとめてみた」*1 の記事が非常に分かりやすかったです。僕の記事を読む前に、読んでおくと良いと思います。僕はこの記事を読んだ後、いろいろ調べてみて、知識を深めました。
*1:「だからチェルノブイリとは違うって何度言えば分かるんだってばよ! 原発についてまとめてみた」2011年03月14日『icoro』
http://www.icoro.com/201103145746.html
非常に簡単に仕組みを説明すると、
1.核分裂を起こすことのできるウラン235に、中性子をぶつける
2.ウラン235核分裂を起こし、さらに中性子を放出する
 1)この段階で、大きい熱エネルギーを放出
 2)この熱エネルギーを利用して水蒸気を発生させ、タービンを回し、発電する
3.放出された中性子がまたウラン235にぶつかり、さらに核分裂が進む
を繰り返しています。
また、
・制御棒を使って、核分裂反応を制御している
・放出された中性子は速度が速すぎ、ウラン235と反応しにくいため、水を使って速度を落としている
・熱エネルギーによって高温になった炉心を冷やすために水を利用している
という点も重要です。
高速増殖炉って?
高速増殖炉は「プルトニウム核分裂させ、エネルギーを発生させ発電したうえで、さらにプルトニウムを増殖する」ための原子力発電所です。これが成功したら、本来は核分裂物質として使えないウラン238を、核分裂できるプルトニウムに変換することができ、原子力発電のための燃料を増やしつつ、発電をすることができます。
軽水炉と同様に、燃料棒、制御棒、減速材、冷却材について説明すると、
・燃料棒 : プルトニウムを使用。また、プルトニウム燃料の周りに、核分裂を起こさないウラン238を配置する
・制御棒 : 軽水炉と同様、核分裂を制御する
・減速材 : 高速増殖炉では、放出された中性子を減速させてはいけない(後述します)ため、使われていない
・冷却材 : 軽水炉では水を使っていますが、これを使うと放出された中性子を減速させてしまう。前述したように、高速増殖炉では中性子を減速させてはいけないため、液体ナトリウムを利用する
燃料を増やしつつ発電できるならすごいじゃん、と思うかもしれません。しかし、仕組みを知るとわかりますが、かなりの危険もあります。実際、海外で作られている高速増殖炉はほとんど撤退を決定し、日本の『常陽』も事故により停止状態、『もんじゅ』もナトリウム漏れ事故により10年以上停止状態になった後、試運転を行いましたが、それでも事故が起きて半停止状態になっています。動かすためにかなりのリスクを伴うことが、これだけでも分かると思います。
高速増殖炉の仕組み
高速増殖炉の仕組みは、“発電のための仕組み”と“核分裂物質であるプルトニウムを増やす仕組み”に分けられると思います。「高速増殖炉とは何」*2 に非常に詳しく載っています。画像もそこから引用させていただきました。
*2:「高速増殖炉って何ですか」『脱原発入門講座』
http://www.geocities.jp/tobosaku/kouza/fbr1.html
それぞれを説明していきたいと思います。
・発電のための仕組み
発電のための仕組みとしては、軽水炉と基本的なところは変わりません。プルトニウム中性子をぶつけます。すると、いくつかの中性子を放出し、核分裂します。この時、大きな熱エネルギーが放出されます。これを金属ナトリウムに熱伝導させ、さらに金属ナトリウムの熱によって水を水蒸気に変え、タービンを回しています。
先ほど言ったように、高速増殖炉では放出された中性子を減速させてはいけないため、水を使って直接冷やすことはできません。また、高速増殖炉では体積あたりに出る熱エネルギーの量が高いため、熱伝導率が非常に良いものでないと十分に冷却することができません。そのため、冷却材として液体ナトリウムを使うようにしています。
核分裂物質であるプルトニウムを増やす仕組み
プルトニウムを増やすための仕組みを知るためには、まずウランについて知る必要があります。
ウランという物質ですが、核分裂できるウランと核分裂できないウランがあります。先ほどから書いていますが、ウラン235原子力発電に使われる核分裂するウランで、ウラン238核分裂できないウランです。つまりウラン235がないと、ウランによる原子力発電はできないということですね。ただし、このウラン235は非常に少なく、現存するウランの約0.7%しかありません。後の99.3%のウランは原子力発電の燃料としては全く使うことができません。
さて、増殖の仕組みですが、この核分裂できないウラン238をなんとか原子力発電所の燃料に変えようとしたのが、基本的な考え方です。実際には以下のようにやっています。
つまり、プルトニウム核分裂してできた中性子の一部をさらに核分裂するための材料として使い、他の中性子ウラン238に吸収させることで、プルトニウム239に変えてしまいます。この仕組によって、発電させつつ、プルトニウムを増殖させるというやり方であることが分かると思います。
ただし、中性子がある一定の速度以上ないと、プルトニウムを増殖させる効率がよくなりません。そのため、先述したとおり、中性子の速度を落とさないようにしないといけないのです。